ゴルフ肘を自分で改善するためのストレッチやマッサージなど7つの対策
- リハビリ
- 慢性不調
INDEX
「ゴルフスイングをすると肘が痛い」
「重いものを持ち上げたりドアの取手をひねると肘が痛い」
「長時間デスクワークをしていると小指がしびれる」
こんな症状がある方は、もしかしたらゴルフ肘かもしれません。ゴルフ肘という名前ですが、ゴルフをする方に限らず、手や腕を頻繁に使うようなお仕事をされている方は、ゴルフ肘になってしまうことがあります。
本記事では、ゴルフ肘になると現れる症状や原因をお伝えするとともに、痛みを改善するための具体的なケア方法として、湿布やサポーターの使い方から、マッサージやストレッチの方法、更には効果的なツボの紹介もしていきます。
すべてご自宅でできる対策法となっていますので、ぜひお試しください。
ゴルフ肘とは?
ゴルフ肘とは、正式には「上腕骨内側上顆炎(じょうわんこつ・ないそくじょうかえん)」と呼ばれるスポーツ障害をさします。名前の通り、上腕骨という二の腕の骨の内側にある少し出っ張った部分に炎症が起こり、痛みが現れます(上写真参照)。
ちなみに、似たような名前で「テニス肘」と呼ばれる怪我がありますが、こちらは「上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつ・がいそくじょうかえん)」というスポーツ障害をさし、肘の外側に痛みが現れます。
ゴルフ肘になると現れる症状
ゴルフ肘で現れる症状は、主に以下の5つです(1)。
- 肘内側の痛み
- 手首を手の平側に曲げる・ひねる動作での肘の痛み
- 前腕〜肘にかけての筋肉の張り
- 握力の低下
- 前腕内側〜薬指・小指のしびれ
ゴルフ肘になると、肘の内側(手の平を上に向けた状態での小指側)に痛みが現れます。炎症が広がると、肘だけでなく前腕の内側にも痛みが現れることがあります。
どこかに肘をぶつけた時に、肘から指にかけてしびれたという経験を一度はしたことがあるかと思いますが、ゴルフ肘では、そのぶつけるとしびれる場所のやや上に痛みが現れます。
また、手首を手の平側に曲げたり、ひねる動作を行うと痛みが現れます。例えば、拳を作ってグッと握る動きや雑巾を絞る動き、ドアの取手を回す動作、ネジをドライバーでゆるめる動き、ゴルフスイングをしたときなどで、痛みが現れたり、痛みが増すことがあります。
更に、肘の内側には太い神経が通っているため、筋肉の張りや炎症の影響で神経が圧迫されると、前腕の内側から薬指や小指にかけてしびれを感じることもあります。
ゴルフ肘になってしまう原因
ゴルフ肘が発生する主な原因は以下の4つです。
- 指・手首・肘の使いすぎ
- 頻繁な投球動作・ラケットを使用するスポーツ
- 肘に負担のかかるゴルフスイング
- ゴルフ初心者
ゴルフ肘は「指・手首・肘の使いすぎ」で起こる怪我と言われています。痛みが現れる肘の内側には、指や手首、肘を動かすための筋肉が複数付着しているため、指・手首・肘をたくさん動かすことで、筋肉の付着部に負荷がかかり、炎症が起こります。
ゴルフをする方に多く発生することからゴルフ肘と呼ばれますが、テニスや野球、ボーリング、やり投げといった、投球動作を行なったりラケットを使用するスポーツでも、ゴルフ肘は発生します。
スポーツ以外でも、長時間タイピングを行うデスクワーカーやスーパーのレジ打ち、フライパンや鍋を多用する料理人や主婦、力仕事の多い介護職の方、ドライバーやトンカチを多用する職人などにも多く発症していることがわかっています(2)。
ゴルフを行なっている方の場合は、肘に負担がかかるフォームでスイングを続けると痛みを引き起こします。
例えば、体全体を使わずに手先だけで打ったり、手首の過度なひねりで打つようなスイング、もしくはグリップを強く握りすぎた状態でのスイングは、腕の筋肉の酷使となって肘に負荷がかかります。
また、肘に負担のかかりづらいスイングであったとしても、単純に練習のしすぎ(ゴルフスイングのしすぎ)で疲労がたまり、ゴルフ肘を発症してしまうケースもあります。
ダフった衝撃が肘にかかることでゴルフ肘を発症することも多いため、特にゴルフ初心者はゴルフ肘になるリスクが高いと言われています。
日常生活や仕事で毎日手首や腕、肘を酷使している方は、一度ゴルフ肘になってしまうとなかなか治らず慢性化してしまうケースが多いため、痛みが現れる前の予防や早めの対策が重要となります。
ゴルフ肘の予防・改善に効果的な7つの対策法
様々なスポーツ障害と同様、ゴルフ肘のケアも大きく分けて「保存療法」と「手術療法」の2種類に分けられます。
Jobeらによる研究(3)を含め、多くのレビューによって、ゴルフ肘は保存療法が第一の治療の選択肢であることが示されています。保存療法を半年〜1年ほどやっても痛みが消えないという場合に限り、ドクターと相談の上で手術療法も考えていきます。
ゴルフ肘の治療で保存療法として行うべきケアの方法、もしくは予防したい方向けに、ゴルフ肘対策として効果的と考えられる方法を7つお伝えします。
1)安静
「どうも肘が痛いな」「ゴルフ肘かもしれないな」となった時、「まぁきっとそのうち治るだろう」と見て見ぬふりをせず、まずは手・手首・肘を使う頻度を減らして筋肉群を休ませることが大切です。
痛みが出る動作をなるべく避けて、肘にこれ以上の負荷をかけないように生活することを心がけましょう。
1つ注意すべきは、早く治したいからといって「完全に固定する」「全く腕を使わずに生活をする」といったことはNGです。Ciccottiら(2)をはじめ、多くの研究によって「完全固定・安静」は筋力の低下スピードを早め、回復に余計な時間がかかってしまうことが示されています。
つまり、痛みの出る動作は避けながら、痛みのない範囲である程度筋肉は使っていくことがゴルフ肘の最初のケアとして重要になります。仕事等で腕を酷使せざるを得なく痛みが出た場合は、アイシング(=氷で患部を冷やすこと)をして炎症を抑えましょう。
2)湿布の使用
ゴルフ肘を含め、どこかに痛みがあるときに「湿布を貼る」という方は多いと思います。ですが湿布にも種類があるため、適切な湿布を使用することが効果的なケアにつながります。
ゴルフ肘は「炎症」が起こる怪我のため、「消炎鎮痛剤」が含まれている湿布を選びましょう。肘を酷使して痛みがあるとき(=炎症が起きていると考えられるとき)に、血行を促進するタイプの湿布を貼ってしまうと、更に炎症が進んで痛みが増してしまうことがあるので注意しましょう。
どの湿布を使用すれば良いかわからない場合は、一度整形外科に行って診察を受けましょう。あなたの怪我・症状に合わせた適切な薬や湿布などを処方してくれます。
痛みが発生して数ヶ月経っているという方は、怪我が慢性化してしまっている状態です。このような方は、湿布を貼っても劇的な回復は期待できないことが多いです。以下で紹介するマッサージやストレッチを行ったりNEXPORTのようなトレーニング施設を利用して、筋肉に刺激を加えて回復を促進していきましょう。
3)サポーターの使用
日常生活や仕事でどうしても腕を酷使せざるを得ない方も多いでしょう。安静にすることが難しく、どうしても痛みが発生してしまう方は「サポーター」の使用をオススメします。
ゴルフ肘向けのサポーターは大きく分けて2種類ありますが、まずは「バンド型」のサポーターを使用してみましょう。
ゴルフ肘の痛みに影響を与えている筋肉群に、バンドをあててテンションをかけることで痛みが軽減します。購入したサポーターの説明書を読んで正しく装着していただければ大丈夫ですが、一般的には「痛みがある場所から指1〜3本分ほど下」あたりにテンションがかかるようにバンドを巻きます。
バンド型サポーターを装着することで、指・手首・腕を使った際の肘にかかる負担を軽減することができるため、強い痛みを感じずに生活できることが多いです。
もしバンド型サポーターは合わない、もしくは痛みの程度の変化がないと感じる方は、肘全体をサポートしてくれる「スリーブ型」のサポーターを試してみましょう。
肘関節全体を包んでくれるので安心感があるとともに、軽い圧迫が加わることで負荷の軽減が期待できます。また、冷え性の方や、冬の寒い時期は関節が冷えるという方は、スリーブ型のサポーターは保温効果もあるためオススメです。
湿布やサポーターをうまく利用しながら、日常生活・仕事で痛みが出る動きをなるべく避けつつ、ここから紹介する対策法を行なって、肘の状態をより良くしていきましょう。
4)マッサージ
指・手首・肘の使いすぎによって筋肉は硬くなり、柔軟性は低下します。筋肉が硬い状態ではより肘に負荷がかかってしまうため、マッサージによって硬くなった筋肉をほぐしましょう。
A)前腕のマッサージ
テニスボールやラクロスボール、野球ボールといったボール、もしくはストレッチポールやフォールローラーをお持ちの方はそれを利用します。持っていない方は、すりこぎ棒や円柱型のタンブラーでもほぐすことが可能です。
手の平を下に向けた状態でボールの腕に前腕を乗せてゴロゴロとほぐします。「痛気持ちいい」程度の強さで30〜60秒ほど行いましょう。しびれるような感覚が出る場所があれば、そのエリアは避けて行います。
B)肘のマッサージ
前腕を全体的にほぐしたら、次はゴルフ肘に影響を与えている筋肉群にフォーカスしてほぐしていきます。
- 手の平を上に向けた状態で、逆の手の親指で肘の内側(痛みが出ている部位よりも下)を、親指で痛くない程度にグッと押さえます。
- 押さえた状態をキープしたまま、上に向けている手の平を下に向けるようにしてひねり、また上向きに戻します。
- ひねる・戻すを3回繰り返したら、押さえている親指の位置を少し変えて、また3回ひねります。
- 親指で押さえる場所を変えて3回ひねる、を何度か繰り返しましょう。
筋肉を押さえた状態で動かすことで、凝り固まった筋肉がほぐれやすくなります。強く押さえすぎると痛いので、あくまで「痛すぎず、気持ちよく感じる強さ」で押さえながらひねりましょう。
ひねる動作で痛みが出る場合は、痛みが出ない程度の範囲で動かします。少しでも捻り動作を行うと痛いという方は、このマッサージはやらずに、Aの前腕マッサージのみを行います。
5)ストレッチ
マッサージで筋肉群をほぐしたら次はストレッチを行って、筋肉が一番力を発揮することができる最適な長さに戻します。
A)前腕のストレッチ①
- 床に座った状態で、指先が自分に向くようにして手を前につきます。
- 手の平が床から離れないようにしながら、ゆっくり体重を後ろにかけて前腕を約30秒ストレッチします。
指はしっかり伸ばして開いた状態で床につきましょう。後ろに体重をかけながら肘をしっかり伸ばしていくことで、ゴルフ肘に影響を与える筋肉群が効果的にストレッチされます。
B)前腕のストレッチ②
- 握りこぶしを作り、手首を手の平側に曲げます。
- 握りこぶしを逆の手で掴み、手首が曲がった状態をキープしながら肘を伸ばしていきます。
- 30秒ほどキープしましょう。
握りこぶしを作って行うことで、指の筋肉までしっかりとストレッチされます。指の筋肉は硬くなっていることを感じづらく見逃されやすいですが、パソコン作業の多いデスクワーカーをはじめ、指を多く使う方はこのストレッチによって、ゴルフ肘だけでなく腱鞘炎の予防にも効果的です。
6)ゴルフ肘に効果的と考えられるツボ3選
ツボとは、医学的には「経穴(けいけつ)」と呼ばれる部位を指すことが多いです。「ツボを押してみましょう」と言うと、「ここを押すだけで痛みや体の不調が改善するなんて簡単でいいね!」と考える方がいると同時に、「ツボを押すだけなんて本当に効くの?」と疑いの目を持つ方も少なくないかと思いますが、2008年にはWHO(世界保健機関)によって、ツボの位置に関して国際的な統一基準が定められるほど研究が進んでおり、ツボの効果が科学的に証明されてきています(4)。
2006年に行われた「経穴部位国際標準化公式会議」で決定された経穴(ツボ)の数は361穴あり、その多くは「神経が集まる場所」に存在することがわかっています(5)。
神経が集まる場所であるツボを刺激することで自律神経に働きかけ、血液の循環や神経伝達物質の分泌、新陳代謝などを促すことができるため、痛みの緩和や身体のコンディションを整えることにもつながります。
ツボは、強く押しすぎると炎症を促進してしまいます。痛いほうが効きそう!と強く押しすぎず、「ツーン」と刺激されているような感覚がある場所を「気持ちいい」と感じる強さで押すのがポイントです。
ツボの位置を見つけ、押す強さを決めたら5秒ほどその強さでツボを押し続けます。5秒たったらゆっくり指を離して5秒休憩。これを3回繰り返しましょう。
A)曲池(キョクチ)
肘を曲げたとき、肘外側のシワの端にあるくぼみに「曲池(きょくち)」というツボがあります。反対の手で肘を持つようにして、親指でくぼみ(肘の骨のキワ)を軽く押してみます。角度を変えながら押してみて「ツーン」と来る場所を探しましょう。
B)肘髎(チュウリョウ)
「曲池」から肩の方向に親指1本分の場所にあるのが「肘髎」です。硬い骨に触れることができると思うので、骨のキワを逆の手の親指で角度を変えながら軽く押してみて、ツーンとくる場所を探しましょう。
C)少海(ショウカイ)
肘髎と曲池は肘の外側にあるツボでしたが、「少海」は肘の内側にあるツボです。手のひらを天井に向けて肘を曲げ、肘内側のシワの先端を親指で押してみましょう。曲池と同じように、骨のキワのくぼみを押すイメージです。
ツボ押しが終わったら、手首から肘、肘から肩へと手の平でさするようにマッサージをしましょう。溜まっている老廃物を心臓へ戻していくようなイメージで行うと良いです。
7)フォーム(投げ方・打ち方など)の見直し・修正
ゴルフ肘になってしまう原因でお伝えした通り、野球ややり投げなどの「投球動作」を含むスポーツや、テニスやゴルフといった「道具を使って打つスポーツ」でゴルフ肘は起こりやすいですが、これらのスポーツを「肘に負担がかかるフォーム」で行うことで、ゴルフ肘になるリスクは一気に上がります。
ゴルフ肘を含めた肘の怪我を防ぐため、もしくは再発予防のためには、投げ方や打ち方のフォームを専門家に見てもらい、肘に負担のかからない動作の習得が必要かもしれません。
また、テニスのバックハンドやトップスピンをかける打ち方を多用することは、肘にかなりの負担がかかります。フォームの見直しに加えて、練習量の調整も考える必要があります。
NEXPORTの専門家による動作チェック&トレーニング
NEXPORTには投球動作やスイング動作を含め、身体動作を評価することが可能な理学療法士やアスレティックトレーナー、また関節に負担のかかる動き・フォームを改善することができるストレングスコーチなど、多領域の専門家がそろっています。
専門家集団による包括的なサポート、そして一人ひとりの身体に合わせたオーダーメイドのプログラムの提供により、ゴルフ肘の痛みの改善・治療はもちろんのこと、怪我をする以前よりもパフォーマンスをアップして競技や仕事に復帰することを目指します。
更にトレーニングだけではなく、栄養に関する指導や具体的な食生活の提案、生活習慣の見直しもプログラムに含まれています。健康的なライフスタイルを身につけていただくことで、ゴルフ肘も含めた怪我の予防や疲労のたまりにくい身体作りが可能になります。
まとめ
ゴルフ肘の症状、原因、そして様々な研究で効果的ということが明らかになっている対策法を紹介しました。
今回紹介した対策法は、ゴルフ肘になってからではなく、ならないための予防としても効果的なものばかりです。肘の炎症は一度発症すると治りづらいため、ゴルフ肘を引き起こす原因のパートでお伝えした職業に当てはまる方は、ぜひ日頃のケアとして行うと良いと思います。
少しでも助けになれば幸いです。
参考文献
- Golfer’s elbow. Mayo Clinic. https://www.mayoclinic.org/diseases-conditions/golfers-elbow/symptoms-causes/syc-20372868. Published October 10, 2020. Accessed January 16, 2022.
- Ciccotti MC, Schwartz MA, Ciccotti MG. Diagnosis and treatment of medial epicondylitis of the elbow. Clin Sports Med. 2004;23(4):693-xi. doi:10.1016/j.csm.2004.04.011
- Jobe FW, Ciccotti MG. Lateral and Medial Epicondylitis of the Elbow. J Am Acad Orthop Surg. 1994;2(1):1-8. doi:10.5435/00124635-199401000-00001
- Lim S. WHO Standard Acupuncture Point Locations. Evid Based Complement Alternat Med. 2010;7(2):167-168. doi:10.1093/ecam/nep006
- Kato M. ホントによく効くリンパとツボの本. 日本文芸社, 2010.