自律神経を整える方法|おすすめの呼吸法・食事・運動・ストレッチ・マッサージ・音楽
- 慢性不調
原因がわからないけれどなんか体調が優れない。そんな方は、自律神経の乱れが原因かもしれません。
「ストレス社会」とも呼ばれる現代は、誰もが自律神経の状態を乱しやすい時代とも言えます。
本記事では、自律神経とはどういうものなのか?自律神経が乱れる、自律神経を整える、とはどういうことなのか?そして、具体的に自律神経を整える方法をお伝えします。
自律神経とは?
自律神経とは、ヒトが生きるために必要不可欠な機能を維持するために働いている神経です。必要不可欠な機能とは、具体的に以下のようなものをさします。
- 呼吸をする
- 体温を調節する
- 心臓を動かして血液を全身に送る
- 血圧を調節する
- 食べた物を消化して栄養素を吸収する
私たちが寝ているときも呼吸が止まらず、血液が全身に送られ、食べたものが消化・吸収されているのは、無意識下で自律神経がせっせと24時間休まずに働いてくれているからです。
すなわち、この自律神経が乱れてしまうと、上記した機能がうまく働かなくなり、結果以下のような不調が現れてきます。
- 呼吸が乱れ、酸素をうまく体内に取り入れることができなくなるため、すぐに疲れを感じたり、慢性疲労の状態となる
- 体温調節がうまくいかなくなり、異常に汗をかいたり、低体温や冷えが発生する
- 血流が悪くなるため、慢性的な肩こりや腰痛が発生する
- 血圧の調節がうまくいかず、立ちくらみが増えたり、高血圧・低血圧になる
- 食べ物をうまく消化・吸収できなくなるため、便秘や下痢が発生する
- 質の高い睡眠がとれなくなるため、日中に眠気を感じる
生きる上で必要不可欠な機能がうまく働かなくなるため「なんか調子が良くない」といった状態となります。
つまり、心身がより良いコンディションで每日を過ごす上で、自律神経の働きを整えることは非常に重要であると言えます。
「自律神経が整う」「自律神経が乱れる」ってどういうこと?
自律神経には、アクティブで緊張した状態を作る「交感神経」と、リラックスした休息状態を作る「副交感神経」の2種類あります。
この2種類の自律神経が、どちらとも高いレベルで活性化されている状態、更に、ふさわしいタイミングでどちらか一方の神経が優位となり、必要な時にスムーズに切り替わる状態、というのが「自律神経が整っている状態」と言えます。
逆に、2種類の自律神経のどちらか(もしくは両方)の活性レベルが低い状態や、どちらかが過度に活性している状態、もしくは必要な時にうまく切り替わらない状態が「自律神経が乱れている状態」となります。
交感神経=頑張るときに働くべき神経
朝起きるとき、仕事に集中して取り組むとき、大勢の前でプレゼン発表をするとき、運動をするときなど、多くのエネルギーを使って頑張る活動を行うときが、交感神経の活動が優位になるべきタイミングです。
「Fight or Flight(闘うか逃げるか)の神経」とも呼ばれる交感神経活動が優位な状態の時は、心拍数は上がり、血液はガンガン全身に送られ、心身は戦闘モードとなります。身体はいつでも戦いを開始できるように緊張状態となり、心は興奮状態となります。
副交感神経=休むときに働くべき神経
夜寝る前や睡眠中、一仕事を終えて休んでいるとき、食事中や食後など、リラックスしてエネルギーを充電するようなタイミングで、副交感神経活動は優位になるべきです。
「Rest and Digest(休んで消化する)神経」とも呼ばれる副交感神経活動が優位になると、心拍数は下がり、血圧も低下、心身は休息モードとなります。
あなたの自律神経の状態をチェックしてみよう!
自律神経が乱れると現れやすい具体的な不調や症状を挙げました。あなたの自律神経は乱れているのか?それとも整っているのか?をチェックしてみましょう。
- すぐ疲れを感じる
- やる気が出ない
- すぐにイライラしてしまう
- 気が散漫になりやすい
- いつも不安である
- 頻繁に風邪を引く
- 肩こり、腰痛、頭痛がある
- 手足が冷たい
- 最近むくみが気になる
- お腹の調子が悪い(便秘 or 下痢の症状がある)
- すぐに空腹を感じる
- いくら寝ても疲れがとれない
- 打撲をすると長い間傷が目立つ
- 自分の脈や心臓の音をときどき聞くことができる
- 突然大きな音がするとひどく気になる
もし1つでも当てはまるようであれば、あなたの自律神経は乱れている可能性があります。チェックが入ったという方は、以下で紹介する「自律神経を整える方法」をぜひお試しいただければと思います。
自律神経活動は「行動」や「習慣」でコントロールできる
自律神経は24時間365日、私たちの意思に関係なく無意識下で働き続けてくれる神経なので、「自律神経はコントロールできない」と言われることがあります。
しかし、交感神経と副交感神経それぞれの活動レベルは、私たちの行動や生活習慣で活性化されるように誘導することが可能です。
副交感神経の活動が優位になるべき睡眠前の時間帯であっても、激しい運動をしたり、神経を高ぶらせるようなスマホゲームや動画視聴を行えば、交感神経活動が活性化されます。
逆に、交感神経活動が活発な状態の際に、副交感神経の活動が活性化される行動をとることによって交感神経活動を抑制し、副交感神経活動を優位な状態に持っていくことができます。
ふさわしいタイミングで、ふさわしい神経が優位な状態となるような行動をとり、生活習慣を築いていくことで、2種類の自律神経の活動バランスは整い、心身はより良いコンディションになっていきます。
現代人の多くは「交感神経活動が常に優位」な状態である
「ストレス社会」とも呼ばれる現代、私たちの周りには交感神経活動を活発にするような行動・習慣で溢れています。
- 時間帯に関係なく送られてくる仕事のメールや友人からのメッセージ
- 刺激的な情報や悲惨なニュース等を与え、心身を興奮状態にするSNSや動画サイト
- ハラスメントやコンプライアンス等、注意深く行動し続けなければならない現代の風潮に対する精神的ストレス
自律神経が乱れる大きな原因の一つが「ストレス」です。私たちはストレスを受けると、交感神経活動を優位にして戦闘モードに入り、多くのエネルギーを使ってそのストレスを対処しようとします。
ストレスへの対処が終わったら、使ったエネルギーを回復するために交感神経優位な状態から副交感神経優位な状態へ切り替われば良いのですが、現代人は常にいくつものストレスにさらされているため、交感神経が優位な状態のまま常に戦闘モードでいるという方が非常に多いです。
片方の自律神経がずっと優位な状態=自律神経が乱れている状態であるため、上記のチェックリストで挙げたような不調が発生していきます。
つまり、自律神経の乱れを整える上で重要なのは、副交感神経の活動が優位になるべきタイミングでちゃんと優位になるような行動・習慣づくりを行う、ということになります。
「加齢」によって副交感神経の機能が低下する
現代は交感神経の活動が優位になりやすい時代とお伝えしましたが、それに加えて、加齢によって副交感神経の機能が低下していくことがわかっています。
つまり、年齡を重ねれば重ねるほど副交感神経の活動は優位になりづらくなってしまうため、自分で意識して副交感神経活動を活性化させる行動をして、機能低下を予防していく必要があります。
自律神経を整える6つの方法
自律神経の乱れを整え、自律神経の活動をよりよくするためにできることをお伝えします。
1)自律神経を整える「呼吸法」
ストレスを受けると交感神経活動が優位になって戦闘モードとなり、心身は緊張状態になると前述しました。この反応自体は悪いことではなく、ストレスに対抗するための大切な反応です。
交感神経が高まると、酸素をたくさん取り入れてエネルギーを作り出そうとするため、荒い呼吸(=浅く速い呼吸)になります。
一時的な反応として呼吸が荒くなる分には良いのですが、その荒い呼吸が慢性的に続いてしまうと、それが原因となって更に交感神経活動が活性化されます。
脳は呼吸パターンを約24時間で記憶すると言われているため、荒い呼吸がデフォルト状態となってしまいます。
荒い呼吸によって交感神経活動が過剰になると副交感神経の働きは低下するため、リラックスすることができなくなり、睡眠の質の低下や慢性的な疲労状態など、心身に不調が現れてきます。
デフォルトとなってしまった交感神経を高めてしまう荒い呼吸は、意識的に「呼吸量を減らす呼吸法(呼吸エクササイズ)」を行ってリセットすることで、交感神経の活動は抑制されていきます。
ここで紹介する自律神経を整える呼吸法(1)は、「15秒で1回の呼吸=1分間で4回」まで呼吸量を減らしていきます。
くれぐれも決して無理はせず、息を止めている際に苦しくなったら息を吸ってください。まずは2〜3秒止めるところから始めてみましょう。
- リラックスして仰向けになります
- 鼻から5秒かけて息を吸います。
- 鼻、もしくは口から5秒かけて息を吐きます。
- 5秒息を止めます。
- 2〜4を3回繰り返します。
「息を吐く」という行為で副交感神経は活性化されるため、息を吐くパートは特に意識をしてしっかり吐きましょう。
また、「腰を反る」という動作は緊張姿勢であり、交感神経の活動を高めてしまうため、決して腰は反らさないことがポイントです。最初は腰の下に手を入れて、息を吸った際に腰が浮かないことを確認しながら行うと良いでしょう。
また、Maらによる研究(2)をはじめ多くの研究によって、1分間に4〜6回まで呼吸量を減らして行う呼吸トレーニングを行うことでストレスレベルが有意に減少することが報告されており、自律神経を乱すストレスの解消にも呼吸法は効果的な方法となります。
2)自律神経を整える「食事」と「食べ物」
食べ物を消化するという活動は副交感神経の役割のため、食事をすること自体で副交感神経が活性化されます。つまり、食事の時間を「副交感神経活動を優位にする時間」ととらえて過ごすことで自律神経を整えることが可能になります。
仕事のメールを読みながら、もしくは脳が興奮するようなスマホゲームを行いながらの食事は交感神経を活性化するため、せっかく副交感神経を優位にできるチャンスを逃してしまいます。
食事の時間は食べ物をしっかりと味わい、リラックスした気持ちで楽しむことが大切です。
また、「唾液を分泌する」という働きが副交感神経の役割になるため、唾液が分泌されるような食べ物、例えば「梅干し」や「辛いもの」を食べる、もしくは「ガム」を噛む、「飴」を舐める、といった行動によって副交感神経活動を高めることができます。
更に「腸脳相関」と呼ばれる仕組みによって、腸の動きの悪さや腸内環境の悪化が自律神経を乱すこともわかっています。
腸内環境を良い状態とするには「腸内細菌のバランス」が重要であり、腸内細菌を養うために必要なのが「食物繊維」です。
食物繊維は、副交感神経を活性化させるために重要な脳神経の1つ「迷走神経」を刺激するため、腸内環境を整えるためにも、自律神経のバランスを整えるためにも、大変重要な栄養素となります。
食物繊維を摂取するためにオススメの食材は以下の通りです。
- 根菜類(大根・人参・ごぼうなど)
- 豆類
- キノコ類
- ブロッコリー
- キャベツ
- たまねぎ
- ナッツ類
- りんご・りんごの皮
- バナナ
食物繊維は意識して摂取しないと不足しやすい栄養素の一種です。ぜひ上に挙げた食材を意識して食べていきましょう。
3)自律神経を整える「運動」
運動は交感神経の活動を活発にさせます。
自律神経は1日の中で、朝から日中にかけて交感神経が優位となり、日が落ちて暗くなっていくにつれて副交感神経が優位になる、という大きなリズムがあります。
自律神経が乱れていると、交感神経が優位になるべき時間帯に活発になりきらず、それが原因で副交感神経への切り替えもスムーズにいかなくなります。
つまり、交感神経の活動が活発になるべき時間にしっかりと交感神経を高めてあげることが、自律神経を整える上で重要となります。
1日の中でも特に、交感神経活動を高めるべきタイミングは「起床後」と「夕方」です。
A)交感神経をアクティブにする起床後の「ヨガ」
睡眠中は副交感神経が優位な状態ですが、朝起きるタイミングに合わせて交感神経が活発になっていきます。起床時に交感神経が高まってこないと、ボーッとしたままやる気が起きない状態になります。
朝はまだ深部体温も上昇しきっていないことから、激しい運動は体への負担が大きいため、ヨガのようなゆったりと動く運動が体を温めて血流を促すため、朝行う自律神経のバランスを整える運動として効果的です。
①座位のねじりのポーズ
自律神経は背骨を通っており、ねじる動きによって背骨を動かすとともに、背骨周りの筋肉への血流が良くなることで、自律神経のバランスが整っていきます。
また、ねじる動きによって腸に適度な刺激が加わるため、腸が働き出すことで脳が目覚め、交感神経がしっかりと活性化されます。
- 両脚を伸ばした状態で床に座り、片方の脚の膝を立て、逆脚の膝の外側に膝を曲げた足を置きます。
- 左右の坐骨に均等に体重を乗せるようにして座ります。
- 息を吸いながら背筋を伸ばし、天井から頭頂を上に引っ張られているのをイメージして首を長くしていきます。
- 息を吐きながら、少しずつ上半身を立てた膝側にねじり、気持ちよくキープできる場所で止まります。
- ねじった方向の手をソッと床に置き、逆の腕は伸ばした状態で立てた膝の外側に肘をあてます。
- ねじった状態のまま、息を吸いながら改めて背筋を伸ばして首を長くし、息を吐きながらもう少しだけねじっていきます。
- ゆったりとした呼吸を5回行い、反対側も行います。
顔だけ横や後ろを見るのではなく、首から腰まで伸びる背骨の一つひとつすべてを動かすイメージで、上半身全体をねじっていきましょう。
②ねじった三角のポーズ
同じくねじる動きが入ったポーズですが、立位で下半身も使って行うことで全身の血流が良くなるため、交感神経が活性化されるとともに自律神経のバランスが整っていきます。
- 立位で足を前後に開き、後ろ足のつま先は45°外側に向けます。
- 上半身を前に倒し、前に出した脚側の手は腰にあて、逆側の手は前足の小指側に置きます。
- 腰から上半身を前足側にねじり、腰にあてている手を天井に向かって伸ばします。
- 視線は上に上げた手の指先に向けます。
- 両足に重心を乗せた状態でキープして、ゆったり5回呼吸しましょう。
座位のねじりのポーズと同様、背骨の一つひとつすべてを動かすようにして腰からねじりましょう。
B)交感神経から副交感神経への切り替えを促す夕方の「汗をかく運動」
朝から日中にかけて優位となっている交感神経から、夜に向かうにつれて副交感神経優位へ徐々に切り替わる必要があるのですが、自律神経の乱れがあるとこの切り替わりがうまくいかなくなります。
汗をかく程度の運動を行うと交感神経がしっかり活性化されますが、その後休息をとることで、交感神経がグンと高まった反動で副交感神経が優位となり、スムーズな切り替えが可能になります。
ジョギングやサイクリング、ジムでの筋トレなど、自分の好きな運動なら何でもOKですが、今回は自宅でもできる全身を使ったエクササイズを2つご紹介します。
①バックランジ・アームリーチ
下半身の大筋群を使うバックランジにアームリーチを加えて、腹斜筋群や背骨周りの筋肉群にもアプローチするエクササイズです。
- 両足を揃えて立ちます。
- 片足を後ろに大きく引いて膝を曲げ、腰を落とします。
- 2の動作と同時に、足を引いた側の腕を天井に向かって伸ばし、上体を逆側へ倒します。
- もう一方の腕は下に伸ばしていきます。
- 後ろ脚の膝を床スレスレの所まで下げ、体側の伸びを感じたら、後ろ足で地面を蹴って、1のポジションに戻ります。
- 左右交互に、左右10回ずつ行いましょう。
②プッシュアップ&ツイスト
上半身の大筋群を使うプッシュアップにツイスト動作を加えて、肩甲骨周りや体幹部にもしっかりと刺激を与えるエクササイズです。
- 両手を肩幅〜やや広めにつき、足は腰幅で腕立て伏せ姿勢を作ります。
- 頭からかかとまでを一直線にキープしながら両肘を曲げて腕立て伏せを1回行います。
- 1の姿勢に戻ったら、片腕を天井に向かって伸ばしながら、体幹部をひねって胸を真横に向けます。
- しっかり腕を伸ばして体幹部をひねったら、1の姿勢に戻ります。
- 腕立て伏せを1回行い、次は逆の腕を天井に伸ばしながらツイスト動作を行います。
- 左右交互に10回ずつ行います。
4)自律神経を整える「寝る前ストレッチ」
ゆったりとした呼吸で、リラックスした気持ちで静的なストレッチを行うことで、自律神経は副交感神経優位な状態へ持っていくことができます(3)。
寝る前の5〜10分程度の静的ストレッチという行動によって副交感神経活動がしっかりと優位になり、心拍数や血圧が下がって身体はリラックス状態となるため、スムーズな入眠へとつながり、質の高い睡眠へと導いてくれます。
基本的には自分が「疲れているな」と感じる部位をストレッチすればOKですが、とくに寝る前にオススメのストレッチを3つご紹介します。
A)首ストレッチ(僧帽筋上部・肩甲挙筋)
体重の約10%の重さである脳を常に支えている首は、一日の終わりにはガチガチに硬まっている場合が多いです。
頭を支える重要な筋肉の2つ「僧帽筋」と「肩甲挙筋」をストレッチして緩ませることで、血流が改善して自律神経の調整に有効です。
まずは僧帽筋上部からご紹介します。
- 片手を腰の後ろにあて、もう一方の手は、手と反対側の耳の上あたりにあてます。
- 腰の後ろに手をあてている側の肩をリラックスさせながら、頭を逆側に傾けます。
- 手で頭を引っ張り過ぎないように注意し、ストレッチ感を感じた所で30秒キープしましょう。
続いて、肩甲挙筋のストレッチです。
- 上体を正面に向けた状態で、顔を斜め前に向けます。
- 顔を向けた反対側の手を腰の後ろに回します。
- 顔を向いた側の手で後頭部をつかみ、顎を引きながらうつむいていきます。
- 伸びを感じたポジションで30秒キープしましょう。
B)胸ストレッチ(大胸筋)
自律神経が乱れ、交感神経活動が優位な状態が続いている人は、身体は緊張状態のため、背中が丸まった猫背姿勢となっています。
すると胸の筋肉は縮まって硬くなり、深い呼吸ができずに浅い呼吸が促進され、それによって交感神経活動が活性化される、という悪循環に陥ってしまいます。
ゆったりとした呼吸をしながら胸の筋肉をストレッチして、身体の緊張状態を解いていきましょう。
- 手を肩の高さまで上げ、指先は後ろに向けて、少し体よりも後方の壁につけます。
- 逆側の手を、上げた腕側の胸に当てます。
- 息を吐きながら、壁の逆側へ顔と体をひねっていきます。
- 胸に伸びを感じたところで30秒キープしましょう。
C)背中ストレッチ(脊柱起立筋)
身体の緊張状態が続くと背中や背骨の柔軟性も低下します。背骨の柔軟性は深い呼吸を行う上でも自律神経を整える上でも大切になります。
- 正座をして、上体をゆっくり前に倒します。
- 頭を床につけ、両腕は後ろに伸ばします。
- 全身の力を抜いて、ゆったりと呼吸をしながら30秒キープします
5)自律神経を整える「マッサージ」
副交感神経の活性レベルを高める上で重要と前述した迷走神経は「首の前側」を通っています。
首の前側には頸動脈が走っているのでくれぐれも強く押してはいけませんが、「首の前側」をさするようにやさしくマッサージすることで迷走神経が活性化され、副交感神経活動が活発になります。
体と顔を正面に向け、そこから肩を動かさないようにして頭だけ動かして右を向いたとき、左側の鎖骨の先端から耳の後ろに向って1本スジができると思いますが、この筋肉を「胸鎖乳突筋」と言います。
この胸鎖乳突筋を、鎖骨の先端部から、後縁をやさしく円を描くようにマッサージしながら徐々に上がってくることで、迷走神経にアプローチすることができます。
痛みが発生しない程度の強さでマッサージをすることで、リラックスしたいときや落ち着きを取り戻したいときなど、いつでも簡単に副交感神経活動を活性化させることができます。
6)自律神経を整える「音楽」
音楽を利用することで自律神経を整えることが可能です。具体的には「歌を歌う」ことと「曲を聴く」ことによって、副交感神経活動を高めることができます。
副交感神経活動にとって重要な働きをするとお伝えした迷走神経は「喉元」も通っているため、歌を歌うことで迷走神経を刺激します。
歌を歌うために息を長く吐くことや、顔の筋肉を動かすこと、声を出すために喉を動かすという行為、これらすべては、迷走神経以外の他の副交感神経に関与する脳神経も活性することができます。
ストレス解消に「カラオケで歌う」という人がいますが、気持ちよく歌うという行動は副交感神経を活性化させて心身をリラックス状態に導くため、すごく理にかなった行動と言えます。
たとえ大きな声で歌わなくても、鼻歌やハミングでも効果があるので、ぜひ歌が好きな方はお試しください。
また、迷走神経は「耳元」も通ることから、自分にとって心地よい音楽を聴くことでも副交感神経活動を活性化させることができます。
あまりアップテンポではなく、ある程度一定のテンポで進むような曲が自律神経にとって良い音楽と言えるようです(4)。ぜひ、あなたの好きな曲で規則的なリズムで進むものを探してみましょう。
Gouldら(5)は被検者に「自然音(風や波の音・虫や鳥の声など)」と「人工音(車が走る音・オフィスでのキーボードを叩く音など)」を聴かせ、その後のストレスレベルをチェックしました。
すると自然音を聴いたグループは、副交感神経の活動が活発になってリラクゼーションの反応が現れ、ストレスレベルが有意に減少したことが示されています。
実際に川や海、森といった自然に触れる機会を作ることができればもちろん良いですが、自然音を聴くことができるスマホアプリもたくさんあるため、ぜひそちらを利用してストレスを解消し、自律神経を整えていきましょう。
NEXPORTで自律神経の状態をチェックしてもらう
NEXPORTでは、実際に自律神経の状態を専門機器を使用して測定し、一人ひとりにあった最適なプログラムを提供しています。
医師、理学療法士、アスレティックトレーナーなど多領域の身体の専門家による問診、測定、評価を経て、トレーニング・栄養・生活習慣を改善するオーダーメイドのプログラムが作成され、マンツーマン指導を受けることができます。
自律神経の乱れは原因が一つではないことが多く、慢性的な不調が続いてしまう方も多いです。
専門家に相談することで、不調の原因ややるべき対策が明確になり、不調の改善につながるケースも多いため、ぜひお気軽にご相談いただければと思います。
まとめ
自律神経の概要から、自律神経を整える6つの方法をお伝えしました。
常に交感神経の活動が高まっていると、エネルギーを使い続けることになるため疲れてしまうのは当然です。
意識的に副交感神経の活動を高める行動をとり、エネルギーを充電する時間を作ってあげることで、自律神経活動のバランスは整い、快調に1日を過ごすことができるようになるはずです。
ぜひお試しいただければと思います。
参考文献
- 『新しい呼吸の教科書 -【最新】理論とエクササイズ』(森本貴義・近藤拓人 ワニ・プラス)
- Ma X, Yue ZQ, Gong ZQ, et al. The Effect of Diaphragmatic Breathing on Attention, Negative Affect and Stress in Healthy Adults. Front Psychol. 2017;8:874. Published 2017 Jun 6. doi:10.3389/fpsyg.2017.00874
- Inami, T., Shimizu, T., Baba, R. and Nakagaki, A., 2014. Acute Changes in Autonomic Nerve Activity during Passive Static Stretching. American Journal of Sports Science and Medicine , 2(4), pp.166-170.
- 『眠れなくなるほど面白い 図解 自律神経の話』(小林弘幸 日本文芸社)
- Gould van Praag, C., Garfinkel, S., Sparasci, O. et al. Mind-wandering and alterations to default mode network connectivity when listening to naturalistic versus artificial sounds. Sci Rep 7, 45273 (2017). https://doi.org/10.1038/srep45273